東京高等裁判所 昭和35年(行ナ)130号 判決
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〔判決理由〕(取消事由の有無について)
三 本件審決は、原告主張の点において判断を誤つた違法があるから、取り消されるべきものである。すなわち、
(一) いずれも本件当事者間に争いのない本件実用新案の要旨およびいわゆる「ロパーバル機構」が本件実用新案出願前から当業者に周知の技術手段であつた事実、本件実用新案審判請求公告公報、とくにその「実用新案の説明」の欄の「秤量物を乗載する受皿12は垂杆8、8及平行秤9、9について、昇降のみなし、前後左右に動揺することなきを以て」との記載ラーメン構造を有する上皿式二本ばね秤の公報梁構造を有する二本ばね秤の公報ならびに本件口頭弁論の全趣旨を総合すれば、つぎの事実が認められ、他にこれを左右するに足る証拠はない。すなわち、
ばね秤において、平行杆により秤量時に秤量機構が前後左右に移動せず垂直方向にのみ移動するようにしたいわゆる「ロパーバル機構」を適用することは、本件実用新案の出願前から当業者に周知の技術手段であり、また、二本ばねのばね秤において、右の「ロパーバル機構」をとるとともに、二本のばねの復元力を一体化するための機構として横方向に一定の長さを有する部材を用い、この部材と受皿とを連絡するために、垂直方向に伸びる一本の吊杆を右の横方向に長さを有する部材に垂設したもの、および、上皿式ではあるが、二本ばねのばね秤で、「ロパーバル機構」を採用するとともに、原告のいう「ラーメン構造」をとつて、その矩形状の枠に直接受皿を取り付けたものは、いずれも本件実用新案の出願前から公知であつたところ、本件実用新案は、前記本件実用新案の要旨にみられるとおりの構成により、いわゆる「ロパーバル機構」をとり、二本のばねの復元力を一体化するための横方向に一定の長さを有する部材としての下部の「受杆4」を設けるとともに、その「受杆4」に、下部に「受皿12」を固着した「枠杆13」の上部と連絡するための部材として、二個の垂杆8、8」を垂設し、この垂杆を二個としたことにより、「ロパーバル機構」と相まつて、秤量時における前後左右への動揺を防止し、迅速・正確な秤量、目盛の誤読の防止、摩耗の減少、耐久性の増大等の効果をあげることを目的としたものであることが認められる。
本件実用新案における「受杆4」について、被告、は、「平行杆9、9の他端を関着させ、ばねを張設する」というだげで、その他の構造を必要とするものではない旨主張するが、二本ばねのばね秤においては、秤量物による荷重のため伸長した二本のばねについて、その一本ずつの伸長度を測定することなく、その伸長により生じた各ばねの復元力を何らかの部材により一体化して、その部材の変位を測定することにより簡易迅速に秤量することができるようにするものであることは、二本ばねのばね秤、とくに本件実用新案のものおよび原告製品のような比較的簡易な秤量に使用されるものについては、その構造上容易に推認しうるところであるから、本件実用新案において、「受杆4」の構造について「登録請求の範囲」にそのような限定がなくても、「受杆4」の果すべき機能を考えれば、それは、技術上当然に前認定のとおりの構造、いいかえれば、二本ばねのばね秤において一定の間隔を置いて垂直方向に並設されている二本のばねを関着すべき水平方向に一定の間隔を有する二点と、その二点間の距離を一定にしてこれらが相対的に移動しないようにするための部分とを有する構造でなければならないことは明らかである。(もつとも、右の二点を結ぶ直線上に欠如した部分があつても、水平方向に一定の長さを有し右の二点が相対的に移動しないようにする部分を備えていればよいのであつて、必ずしも原告主張のような「左右水平方向に細長い棒状部材」に限られるものではない。)
右の点に関し、本件審決は、一方では、「突片4、4は吊主枠に設けられており、もつてばね2、2が秤量物の目方の変化に応じて吊主枠の変位を正比例的に制御することにおいて、その機能としては前者の受杆4と全く同一のものである」として、「受杆4」が二本のばねにより秤量物の目方の変化に応じてその位置を正比例的に制御されるべき機能を有することを認め、したがつて、「受杆4」が前認定のように二本のばねの復元力を一体化する機能を有することを前提としながら、他方、「本件実用新案の受杆は、垂杆8、8の両方に一体として固設されていようと、垂杆8、8の間は欠如されて、その両端部のみ垂杆の相当箇所に突体として固設されていようと随意のものである」としているのは、「受杆4」の有すべき前記機能についての認識の徹底を欠き、その構造についての認定を誤つたものといわざるをえない。
(二) つぎに、原告製品は、前記争いのない構造によれば、二本ばねの下皿式ばね秤であつて、いわゆる「ロパーバル機構」を有しているものであるが、二本の「張力ばね2、2」の復元力を一体化する作用を有するものは、両側下部に「突片4、4」を取り付けた矩形状「吊主枠8」全体であることが明らかであり(二個の「突片4、4」および「吊主枠8」のうち「突片4、4」より上の部分あるいは下の部分が、それのみで二本のばねの復元力を一体化する機能を有する、すなわち、それだけの強度を有するとする考えは、原告製品がいわゆる「ラーメン構造」を採用していること自体からみて、技術上不合理といわさるをえない。)、下部に「受皿12」を備えた「枠杆13」は、その上辺を直接「吊主枠8」に取り付けられており、二本のばねの復元力を一体化する機能を有する部材(吊主枠と突片)と枠杆とを連結すべき部材はない。
(三) 叙上の事実に基づいて本件実用新案と原告製品とを対比すると、両者は、二本ばねの下皿式ばね秤でいわゆる「ロパーバル機構」を採用している点では同一であるが、原告製品においては、本件実用新案の「受杆4」が果している二本のばねの復元力一体化の作用と同一の作用を果しているのは、前示のとおり、「突片4、4」を備えた「吊主枠8」全体であり、本件実用新案において器体内の受杆と器体外の枠杆とを連結している「垂杆8、8」にあたるものは、原告製品には存在しないことが明らかである。したがつて、原告製品は、本件実用新案の要旨とする前記構造のうち、二個の「垂杆8、8」に相当するものを欠くものであるから、原告製品は本件実用新案の必須要件をことごとく具備したものであるとした本件審決の判断の誤りであることもまた明らかなところといわざるをえない。
(むすび)
三 以上のとおりであるから、その主張の点に違法があるとして本件審決の取消を求める原告の本訴請求は、その理由があるものということができる。よつて、これを認容する。
(三宅正雄 杉山克彦 楠賢二)